Interview : コトラー教授とケロッグ-映像制作裏話
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(聞き手:石倉真衣)
――まずは、映像制作にいたった経緯をお聞かせください。
ケイティ堀内:私は、ケロッグ経営大学院(ケロッグ)の卒業生でもありますが、社長、又は、企業のキーパーソンなどの「人」を通じてブランド構築を支援する会社、H&Kグローバル・コネクションズの経営もしています。その専門性を活かして、ケロッグ卒業生が組織するコミュニティ「Kellogg Club of Japan」のブランド向上に貢献したく、PR委員を担当していました。
そんな中、2012年暮れ頃でしょうか、ケロッグの看板教授であるフィリップ・コトラー教授が、10年ぶりに来日されるとのお話が舞い込んできました。そして、コトラー教授と親しくされている先輩から、彼をインタビューすることを打診されました。大変なプレッシャーでしたが、ケロッグ卒業生として、ケロッグ関係者の魅力を軸としたブランド・コンテンツの絶好のチャンスだと捉え、そのプロジェクトを進めることにしました。
この時、私と堀内がずっと思い描いていたビジョンが浮かびました。それは、「人の魅力を映画のようなストーリー力と映像力で表現し、ブランド向上に役立てる」というPR方法です。こうして、私達は、徹底したリサーチを行い、コトラー教授に密着取材することになりました。
堀内秀隆:私達の使命は、組織の顔とファン作りなんですね。つまり、素晴らしい理念や専門分野、実績があるのに、資本力やノウハウの欠如から、知名度が低く、十分評価されていない事業の魅力を、「人」を軸としたコンテンツで日本・海外に伝える事です。今回の映像は、映画制作のように様々な分野の小さなプロフェッショナルが専門性を発揮しチームとして成果を出す事ができました。
――なるほど。今回の映像におけるメインテーマは、どのように設定されましたか。
ケイティ堀内:コトラー教授だけでなく、ケロッグ卒業生、そして先生がお会いになる経営者はみなVIPばかりですので、とても悩みました。成功者をそのまま成功者として伝えるとコンテンツは面白くなくなってしまいます、さらに、著書も50冊以上出されているコトラー教授については、すでに多くの媒体が取り上げられています。ですから、チーム内で何度もブレインストーミングした結果、「私たち独自の視点で、超一流といわれているコトラー教授の内面の魅力に迫り、ケロッグ卒業生の視点でストーリー性を持たせたコンテンツにしよう」と決めました。そして、独自で調査した結果、先生の内面や魅力に迫ったコンテンツや映像は、まだ存在していない事がわかりました。ですから、この映像は世界でオンリーワンのコンテンツになったわけです。
弊社は、自社のウェブをメディア化する「オウンドメディア」を戦略的に活用することを日頃から提案しています。そのためには、「ネット上の映像を観るユーザーを想定して、価値あるユニークなコンテンツとして制作する」ことが重要となります。
ですから今回の映像は、ありふれたマーケティング関連のコンテンツにせず、コトラー教授の素顔をクローズアップして映像化しました。先生が、マーケティングを通じて社会をより良い場所にしたいと願っていること、何歳になっても好奇心を忘れず人との関係を大事にしていること、ケロッグ卒業生がコトラー教授からの学んだことや卒業後の活躍、そして日本の経営者との交流などを中心に構成を考えました。
――それでは、そのようなテーマでコトラー先生の密着取材を行うと提案をしたとき、周囲の反応はいかがでしたか。
ケイティ堀内:ケロッグのPR委員のメンバーで日産自動車取締役の星野朝子氏、立命館大学院のマーケティング教授の鳥山正博氏は、「おもしろい、やろう!」とすぐに賛成をしてくれました。また、同窓会会長で首相官邸勤務(取材当時)の加治氏も賛成してくださり、役員会で承認を得た後に、コトラー教授に提案をさせていただくことになりました。
コトラー教授と親しい先輩を介して、「3日間行動を共にさせていただくこと」「他のメディア取材の邪魔をしないこと」「出来上がった動画をYouTubeなど動画サイトに投稿する事」という内容で取材を打診したところ、翌日には ”No problem !”というお返事をいただくことができました。コトラー先生が快くOKしてくださったのは、やはり生徒に対する愛情の証しだと思います。
――では実際に制作がスタートし、お二人が大変だと感じたことはありましたか。
堀内秀隆:はい、まず大変だったのは、関係各位との調整です。要職につき多忙を極める卒業生たち、外部企業5社、制作協力してくれた各担当パートナー、映像を完成させて広めていくための協力依頼等コーディネートすることは山ほどありました。制作に入る前には、制作パートナーの選考も行いました。候補が20社以上ある中から、1ヶ月程かけて慎重に選ばせていただきました。その結果、このプロジェクトは、KCJの卒業生と関係企業の皆様、弊社制作チームが力を合わせて成果を出せました。
ケイティ堀内:構成を考えるのも大変でした。特に今回は、超VIPの外国人ということで、構成や字幕は私自身が担当させていただきました。コトラー教授の授業でマーケティングを学ばせて頂いたこと、そしてケロッグの卒業生であること、またKCJのPRを担当していることもあって、このプロジェクトは先生の魅力をKCJの視点で伝えるという使命感を持って取り組みました。構成・字幕は、修正すればするほど良いものになっていくと感じたので、修正は10回は優に超え、妥協することなく改善に改善を重ねました。編集の片山知さんには多大な御尽力をいただきました。
――たくさんの方々の協力や思いがあってこそ、この動画が完成したのですね。そんな大変な一連のプロセスを経て、やはりこの企画をやってよかったと思えたことはなんですか。
堀内秀隆:やはり、超一流といわれる方と3日間行動をともにできたことです。このようなシチュエーションがなければ、彼の話し方や行動・考え方を通して、彼自身に人徳がともなっているということを目の前で知る経験をする事はなかったでしょう。こんな方がマーケティングという世界を切り開き、その頂点に立っているのだということを実感できたことは、私たちの大きな喜びです。
――なるほど。コトラー先生の「人徳」は、どういったときに感じ取られましたか。
堀内秀隆:三日間、ずっと感じていましたね。まず、教授は常に謙虚で、誰に対しても公平です。そして強い好奇心をお持ちです。いつもメモ帳を携え、情報収集をされていました。私たちインタビュアーに対しても、たくさんの質問を投げかけられました。「日本経済は最近どうなっているの?それって何が要因だと思う?」といった感じです。これに対して私たちが答えると、しっかりと聞いてくださり、うなずきながらメモにペンを走らせる。教授自身も取材を行っていらっしゃるようでした。
そして、得た情報やご自身の考えを、次の日の取材やプレゼンテーションでお話ししてくださるのです。何より素晴らしいと思ったのは、教授自身がこのサイクルをライフワークとして心から楽しんでいらっしゃることでした。いろいろな意見を聞きながら、教育者らしく誠実にアドバイスをしてくださる表情は、とても印象的でした。
ケイティ堀内:コトラー教授はすでに80歳を越えておられ、無理ができないお年なので、このような密着取材は本当に貴重な機会です。撮影を通して、教授が本当に発信したいことを収めた映像を、日本のビジネス・プロフェッショナルにお伝えするお仕事ができ、私たちは本当に幸運です。
――ちなみに、コトラー教授はどんなことをよくおっしゃっていましたか。
堀内秀隆:’Let me ask you a question!’ 教授は誰に対しても、こんな風におっしゃいます。この言葉に、彼のすべてが凝縮されているような気がします。「質問させてくれるかい?」というスタンス、つまり常に人から何かを学ぼうという姿勢でいらっしゃるのだと思います。
ケイティ堀内: 2013年の10月、東京に教授が再来日した際に、完成した映像を見ていただきました。彼は”Wonderful!!.”と言ってくださいました。さらに、私達がCEOブランディングの事業をやっていますとお伝えすると、“それは面白い。今後は、このようなCEOブランディングが注目されていくだろう”、とコメントを頂きました。この瞬間、世界のマーケティングの父が、私達がやっている方向は正しいとお墨付きをくださったように感じました。
これは、その時に先生が書いてくださったメッセージです。これからも、社長やCEOを軸としたブランド・プロデュースで、社会に貢献しながら成長していきたいと思います。
To H&K Global Connections,
Your company did a great job of preparing the 15 minute film of my visit to Japan.
I would recommend your company as one of best to make CEO films.
Philip Kotler
Oct. 29, 2013
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