ミッション遂行のためには、大統領へも異議を唱える!?パタゴニアの世界観(3)/全3回
あらゆる価値観が猛スピードで変化する昨今。変化に適応しようと、ともすると、「正しさ」が、その流れから置き去りになることがあります。
こんな言葉があります。
「物事は、生物共同体の統合性、安定性、そして美しさ(integrity, stability, and beauty)を保つ傾向にあるとき、正しい」
アルド・レオポルド (米国の生態学者・自然保護主義者)
トランプ政権時、大統領令によりアメリカのナショナル・モニュメント(国定記念物)が前例のないほどの危機に晒されたことがありました。ユタ州などにある指定保護地域を大幅に縮小するという決定がなされたのです。
この決定がなされた2017年12月、これまで地球環境の保護を強く提唱してきたパタゴニアは、自らのその歴史を継続させるため、テレビ広告を使い自分たちの声を主張しました。パタゴニアは、テレビ広告をトランプ政権に対する説得のために使用した初めての会社となり、そしてこれが、パタゴニアの創業以来約45年の歴史の中、初めて行ったテレビ広告となりました。
当時、パタゴニアの社長兼CEOのローズ・マーカリオ氏は声明文で、こう述べています。
「ナショナル・モニュメントは私たちの国の遺産の重要な一部であり、これらの土地は私たちのみでなく、未来の世代に属するものです。結果がどうあれ、私たちは公有地保護のための戦いを止めることはありません。そして人々の声は届くと信じています」
パタゴニアは、当時の内務長官に「我々の最大の宝物は公有地である」という彼自身の発言を思い出してもらうため、モンタナ州で州全域のテレビとラジオの広告スペースを購入しました。2か所の指定保護地域について過去100年で最大規模の縮小が発表されたユタ州でも、テレビとラジオの広告スペースを購入。そしてネバダ州では、ゴールド・ビュート国定公園やベイスン・アンド・レンジが脅かされているとして、ラジオ広告を流しました。
加えて、創業者のイヴォン・シュイナード氏はトランプ政権を訴えると発表。同社ウェブサイトのトップページに以下のような抗議文を掲載したのでした。
「大統領があなたの土地を盗んだ。大統領は、ベアーズ・イヤーズ地域とグランド・ステアケース・エスカランテ地域を縮小する違法な決断を下した。米国史上、最大の保護地域縮小だ」
また、CNNの取材に対しシュイナード氏は「大統領を告訴しようと思う。トランプ政権に状況を理解させるため、それが唯一の手段だ」と述べたのでした。ニューヨークタイムズは、「Patagonia v. Trump」という記事を掲載。
パタゴニアは、ビジネスや政治という範疇を超え、所属するコミュニティにコンテクスト(文脈)を与え、「企業やブランドだけでは闘えない大きな問題に対して、次世代や社会のために行動を起こすよう促す」という、非常に活動的な会社という印象を受けます。だからこそ、世界一のレスポンシブル・カンパニーと言われるようになったのでしょう。
現にその後、パタゴニアの競合である他のアウトドア関連企業「REI」や「ザ・ノース・フェイス」「ブラックダイアモンド」も、公式サイトで公有地保護のための声明を出したのでした。
パタゴニアがミッションで掲げる「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という企業の存在理由が、競合他社の枠を超え、より良い世界のために業界の結束を強めました。これからは、そんな企業がますます顧客の支持を得ることになるでしょう。
私たちはそんな企業のお力になりたいと思います。
以下の映像に、ミッションに基づくパタゴニアの世界観を見ることができます。
>>なぜパタゴニアは公有地のために戦っているのか
(by パタゴニア創業者イヴォン・シュイナード)
>>”Patagonia: The Sustainability Champions”
文:堀内秀隆
(H&K グローバル・コネクションズ 共同創業者/クリエイティブ・マーケター)
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