取材後記(4) ケロッグ懇親会でコトラー教授が語った平和へのマーケティング フィリップ・コトラー教授
コトラー教授は、来日する際に必ずケロッグ卒業生と会う。今回は、ケロッグ卒業生30名ほどが集まって、懇親会が開催された。プライベートな空間で、コトラー教授の貴重なレクチャーを独占。“平和はマーケティングできるか”というテーマについても語ってくれた。
ケロッグ懇親会にコトラー教授 登場!
閑静な住宅街にある高級マンション。バルコニーから見える東京の摩天楼、おいしい料理、アップテンポのジャズ。
私たちケロッグ卒業生にとって、もっとも待ちわびた時間、いよいよコトラー教授を囲んでの懇親会だ。KCJ会長を務める加治氏(内閣広報室参事官)の計らいで、パーティは、彼の自宅で行われた。
広々としたリビングは、あっという間に卒業生で埋め尽くされ、大変な熱気だった。
卒業生でありコトラー教授と交友の深い柴田光廣氏(コンサルタント)をはじめ、日産自動車 執行役員の星野朝子氏、サトーホールディング(株)社長の松山一雄氏、株式会社PTP代表取締役の有吉昌康氏、その他、各方面で活躍する若手メンバー含め、約30名が多忙なスケジュールを調整して出席した。
年代も業界も多種多様なバックグランドを持つケロッグ卒業生たちが一同に介すると、いつものケロッグ同窓会のように、華やかな場となった。
公的な場とは違う、とてもリラックスした優しい笑顔を見せたコトラー教授。先生を囲むように座った私達は、まるでエバンストン市にあるケロッグのキャンパスにある教室にいるかのように感じた。そこで、コトラー教授は、学者としてではなく、私たちの“恩師”の顔となった。
私達にとっては、先生のレクチャーを独占する“夢”のような時間となった。
平和~Peace~はマーケティングできるのか?
加治邸にて開かれたケロッグ懇親会で、コトラー教授は次のようなエピソードを語ってくれた。
サウジアラビアのある王族関係者に招かれた時、このような質問を受けた。
「PEACE(平和)はマーケティングできるのか?」
この質問は、アメリカと中東の関係がどこまでも根深く、争いの耐えない状態を憂いでのものだった。
そして彼は、「優れた仲介者(mediator)」を媒介することによって、平和へ向かうことができるはずだ」と伝えたという。コトラー教授は、さらに踏み込んで、私たち日本人も、その「優れた仲介者」として貢献できるのではないかと言った。
この言葉に、全員が、息を呑んだ。
よく考えると、日本は、かつてアメリカとの戦争で被爆国となり、多くの尊い命を失った。それなのに日本は、核を捨て、戦争を放棄し、アメリカやその他あらゆる国々と良好な関係を築こうと努力している。つまり、「武力」でなく「和の力」を信じ、実践している国なのである。
私たち日本人にできる平和へのマーケティング、それは「和の力」の実践ではないだろうか。
日本の向かうべき道のひとつが、私たち卒業生に示されたような瞬間だった。
取材・文責:ケイティ堀内
*この記事は、ケロッグ・クラブ・オブ・ジャパン(ケロッグ経営大学院 日本同窓会)が運営するサイト、ケロッグ・ビジネススタイル・ジャパン向けに執筆したものです。