リーダーのストーリー
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【創業者×理念 #2】グラミンフォン:ノーベル平和賞受賞者とともに携帯電話でアジアの最貧国に希望をもたらした立役者 イクバル・カディーア

【創業者×理念 #2】グラミンフォン:ノーベル平和賞受賞者とともに携帯電話でアジアの最貧国に希望をもたらした立役者 イクバル・カディーア

“アジアの最貧国”といわれるバングラデシュ。

同国は、第二次世界大戦後のインド独立とともに勃発したパキスタンとの紛争をはじめ、汚職やクーデター、過激派の脅威、不安定な経済、はたまた洪水やサイクロンといった自然災害など、数々の苦難を被ってきました。

しかし、ビジネスの力で人々に希望をもたらした起業家がいます。彼こそ、イクバル・カディーア氏(Iqbal Quadir)。同じバングラデシュ出身のノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス氏の協力を得て、携帯電話会社「グラミンフォン(Grameenphone)」を社会的成功に導いた人物です。


Photo by David Stanley from Wikimedia Commons

今回はグラミンフォンを事例に、「創業者と理念」というテーマで書いてみます。

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当ブログ「リーダーのストーリー」シリーズでは、弊社の信条である≪人が究極のブランド≫を実践し、世界で活躍するリーダーたちにスポットを当てて、独自の視点で分析。

変革に挑むリーダーやチームのために、理念・パーパスの実践 、クリエイティブな発想、ステークホルダーとの関係づくりなどに役立つブランド・コンテンツや、コミュニケーションのヒントを発信しています。
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※本記事は、過去の記事を再編集したものです


カディーアが創業するまでの軌跡

今やバングラデシュを代表する電話会社となった「グラミンフォン」の創業者カディーア氏。まずは彼の生い立ちからご紹介しましょう。

イクバル・カディーア氏(Iqbal Quadir)

イクバル・カディーア氏(Iqbal Quadir)
Photo by Sirajr from Wikimedia Commons

バングラデシュで過ごした少年時代に、彼は腐敗した母国に失望。その後、海外に活路を見いだし、奨学金を得て米国留学を果たしました。さらにペンシルバニア大学の博士課程まで進み、就職後もウォートン校でMBAを取得するなど、たゆまぬ努力を続けます。

世界銀行、コンサルティング会社、ベンチャーキャピタルでの勤務を遍歴し、華やかなキャリアを築いていたカディーア氏でしたが、1997年に36歳で帰国。その理由は、母国にはびこる絶望的な貧困を救うためでした。

やがて、「グラミン銀行(Grameen Bank)」の創設者ユヌス氏から支援を受けて、グラミンフォンを創業します。ユヌス氏は、世界的に有名なソーシャルアントレプレナーであり、貧困層へのマイクロファイナンスが評価され、2006年にノーベル平和賞を受賞した人物です。


BOP
経済発展に貢献したカディーアのビジネス哲学

なぜカディーア氏は、携帯電話を使って人々を救済しようとしたのでしょうか? それは、独自の分析に基づいた、彼のビジネス哲学に見ることができます。

「Connectivity is productivity.(つながりこそが生産力を高める)」

創業当時、バングラデシュにおける携帯電話の普及率は500人に1台。農村では皆無。

地元の人々は商売をしたくても、そのために必要な商品のニーズを調査したり、顧客に連絡したりする術がないため、大変不利な状況にありました。母国の経済発展を著しく阻害しているこの実態を見たカディーア氏は、貧困の根本的要因が「インフラの不足」であることを突きとめたのです。

彼はノルウェーの電話会社から提供されたノウハウと、グラミン銀行のインフラ支援を受けて、国内に1,100支店と12,000人のスタッフを獲得。この支店網をネットワーク化しました。

やがてグラミンフォンは、350万人の加入者を有する国内最大手の電話会社へと飛躍的に成長。同社は「新興国で成功した画期的なビジネスモデル」として脚光を浴び、今なお地元の人々に希望を与え続けています。

「国の発展に最も必要なのは、経済発展が『人々の、人々による、人々のため』だと認識すること」

カディーア氏のビジネス哲学は、従来の“援助”のあり方を大きく覆します。その特徴を次に見てみましょう。

●  “貧しい人々は受益者”という考えは誤り。彼らは有能で向学心もあり、逆境に強い人々で、重要な人財資源である
●  “衣食住が優先”というのは、先進諸国の干渉的な思考。安易な金銭的援助には、政府と市民を分断する弊害がある
●  貧しい国に援助は不要。必要なのは、人々が自身で行うビジネスだ
●  貧困地域でのサービスがコスト高なら、多くの人々が関与することでコストを削減できる

同社は“BPO(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド=発展途上国の低所得者層)”の人々を対象にしても、収益性が高いビジネスが可能だと見事に証明しました。

グラミンフォン(Grameenphone)の店舗

「情熱が人々を動かす」- Anything is possible if you have passion.

グラミンフォンを成功に導いたのは、カディーア氏が確立したビジネスモデルはもちろんのこと、彼の熱意に賛同し、協力した人々や企業の存在も看過できません。

一つ目は、ユヌス氏がパートナーになったこと。グラミン銀行の人的リソースや支店網を活用できたのも、カディーア氏が全面的に信頼され、ユヌス氏の長期かつ壮大なビジョンとカリスマ性、影響力を勝ち得たからでした。

二つ目には、世界有数のヘッジファンド会社を率いる投機家として有名なジョージ・ソロス氏が味方についたこと。ハンガリー出身のユダヤ人として、少年期にロシアによるユダヤ人大虐殺を目の当たりにしています。ソロス氏は慈善事業家の一面も持っており、カディーア氏の熱心な呼びかけに心を動かされたのでしょう。グラミンフォンのために、1,060万ドル(約10億円強)を5%の低金利で融資しました。

三つ目が、外国企業による投資です。携帯電話で先進的なノルウェーの「テレノール社」が交渉で難色を示したとき、カディーア氏が相手の担当者に発した言葉は実に衝撃的なものでした。

「崖っぷちに片手でぶら下がっている私を、あなたはもう一方の手でよじ登る機会もくれず、見殺しにするつもりですか?」

彼の熱弁によってテレノール社を動かした結果、同社がグラミンフォンの最大株主になったのです。

他にも世界銀行やアジア銀行、日本の大手商社・丸紅など、多くの海外ステークホルダーがサポート。バングラデシュの社会を大きく動かしたことは、言うまでもありません。

素晴らしい人物には、素晴らしい人がつながる。これは、人脈構築やパートナー選びの鉄則です。

カディーア氏のサクセスストーリーを、皆さんはどのように感じましたか?

何かを成し遂げられないとき、ほとんどの人たちは“できない理由”を探そうとします。しかし成功するかしないかは、その人が持つビジョンやパーパスに大きく左右されるのではないでしょうか。

「Good business is good development.(良いビジネスが、良い経済を生む)」。

今回のポイント:

BPOビジネスにおいても、ビジネスの出発点は、理念である。

文:ケイティ堀内 
(H&K グローバル・コネクションズ 共同創業者 / プロデューサー)

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