ステキ人ストーリー
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独自のマジックワールドを創造した、ミルト・ラーセン氏

独自のマジックワールドを創造した、ミルト・ラーセン氏

先週、カンヌで国際グランプリを受賞した河瀬直美監督のトークショーに行ってきました。同時に、10年前にカンヌで新人賞を受賞した「萌の朱雀」も見ました。これは、奈良の過疎地の生活を描写した地味~な映画で、メッセージを理解するのに苦労しました。

実は、出演した俳優さん達も、最初は何が言いたいのか理解できなかったらしいです(笑)。

でも、監督本人にとっては、涙なくしては読めない脚本で、話を聞いているうちに、彼女のメッセージを感じることができました。また彼女が描写した世界観は、奈良の過疎地を描いてはいるものの、世界共通のものだからこそ、受賞したのだと思いました。

大衆にすぐには理解されない、でも重要な「何か」を、自分のアンテナを通して世に発信する姿。インスピレーションを受けた日でしたよ。

皆さん、ハリウッドにある「マジック・キャッスル」って、聞いたことありますか?

マジック・キャッスルは、ハリウッドにあるビクトリア調のお城で、世界的に有名なマジシャンの為の会員制クラブです。そこでは、上品な雰囲気の中で、毎晩、最高の食事と、世界中からやってきた一流マジシャンの演技を楽しむことができます。

「アカデミー・オブ・マジカルアーツ」という協会の母体でもあり、マジシャンやその愛好家をメンバーとして受け入れ、マジックというアートの領域を極め、普及させる活動を行っています。

メンバー数は、2006年で5,000名にも達し、著名なマジシャンとして、ダイ・バーノン、リッキー・ジェイ、ランス・バートン等。マジックを愛するセレブとしては、スティーブン・スピルバーグ、スティーブ・マーティン(映画”花嫁のパパ”で主演)、ジェイソン・アレクサンダー(Seinfeldという有名TV番組に出演しているコメディアン俳優)がいます。

世界からマジックのプロフェッショナルや愛好家が集まり、「マジックの殿堂」とさえいわれるいるマジック・キャッスル。

今回は、その創立者であるミルト・ラーセン氏のステキポイントに迫ってみようと思います。

私にとって、マジシャンというと、Mr.マリック、プリンセス・ テンコー、マギー司郎、極めつけはゼンジー北京(古い!)ぐらいしか、知らなくて、あまり身近な話題ではありませんでした。

でも、去年、東京で行われたダンス&マジックフェスティバルで、初めてマジック・キャッスル演出のマジックショーを見たときは、身震いがしました。ダニー・コール、緒方集人、などなど、マジック・キャッスル出身の有名な一流マジシャンが、舞台で、コイン、カードなどで私達をあっという間に魅了してしまいました。

興奮さめやらぬ私たちは、大胆にも、マジック・キャッスルに訪問して、ラーセンさんにお話を聞きたい!と思ったのです。
断られるのは百も承知で、ラーセンさんに、メールと電話で、ラブコールを送りました。

やっとつながった電話で、「魅力的なマジック・キャッスルをプロデュースしたあなたのビジネス哲学をお伺いしたい」と、単刀直入に伝えました。彼は、寛大な心で、受け入れてくれ、なんと、2006年7月に、彼を訪問することができたのです!

マジック・キャッスルのクルー達は日本から来た私達を丁重に応対してくれました。また、ラーセンさんは、忙しい合間を縫いながら、エグゼクティブ・アシスタントのデール氏を連れて、食事を共にしてくれました。

ラーセンさんの魅力について、いろいろと質問させてもらいました。そして、館内を見学して、ショーも楽しみました。しっかりと、ラーセンさんのステキポイントを見つけてきましたよ。

●ステキポイント:
「ラーセン」スタイルを持ち、徹底している事

マジック・キャッスルは、独特のサービススタイルで提供されています。例えば、ネクタイとカクテルドレスというドレスコードがあります。また、メンバー制で、メンバー、又は、そのゲストでないと入館できません。有名人でも入館を断られたというエピソードがあります。

また、どちらかというと、こじんまりとした小さな空間で、お客様と身近な距離で、小話やユーモアで和ませたり、ショーに参加してもらうといった「Intimate magic(親しみのあるマジック)」というスタイルです。

また、館内も独特で、マジシャンのミュージアム、コメディクラブ、そして、ディズニーの「ホーンテッドハウス」のような不気味なテイストも織り交ぜています。

例えば、エントランスに入っても、壁一面が本棚が立ちはだかっていて、「オープン・セサミ!」と唱えないと中に入れなかったり。また、「イルマ」というピアノを弾く幽霊がいて、見えない彼に向かって、曲をリクエストすると、誰もいないピアノが演奏しはじめたり。壁一面に、歴代のマジシャンの似顔絵が飾っていたり。

独特の世界ですよね。でも、不思議に思ったことがあります。

ここまで成功しているならば、なぜ、ラスベガスのような大舞台のショースタイルにして、より多くの大衆に受けるようにしないのか。

また、なぜ、ハリウッドにしか、マジック・キャッスルは存在しないのか。

彼の著書「Hollywood Illusion: Majic Castle」を読んで、答えが明白になったように思います。

それは、彼のビジネスコンセプトが、父ウィリアム・ラーセン・シニアの夢がベースになっていたからではないかと思います。父も、マジシャンであり、「マジシャンの為のエレガントなクラブハウスを作りたい」という夢を叶えられないまま、48歳という若さで他界してしまいました。

当時、ラーセンさんは、NBCテレビのクイズ番組「Truce or Consequences」の脚本家として成功しており、兄もCBSテレビのプロデューサーとして成功していました。二人の息子は、これらエンターテイナーとしての経験を活かし、父の夢を実現すべく、事業コンセプトを描いたのです。弟ミルト・ラーセンは、マジック・キャッスルを創立させ、兄ビル・ラーセン・ジュニアは、「アカデミー・オブ・マジカル・アーツ」の社長に就任し、協会を発展させました。

つまり、彼のビジネスは、「Family Value=家族で共有する価値感」を基礎にしているのです。どんな魅力的なオファーがきても、単なる経済的な理由だけで、事業を変更したり拡大することはありませんでした。

例えば、ユニバーサル・スタジオをはじめ、多くの会社から、ハリウッド以外の場所で、マジック・キャッスルを実現しようと多くのオファーを受けました。しかし、ニューヨーク、サンフランシスコ、フロリダ、どの場所においても、土地・建物との相性、サービススタイルの違いなど、様々な理由で実現を見送っています。

ここに、彼の「容易に事業を拡大しない」という哲学が伺えます。
マクドナルド等、フランチャイズが多いアメリカでは、とても珍しい事だと思いました。

また、ラスベガスのシーザース・パレスにて、彼がコンサルタントとして手がけた「シーザース・マジカル・エンパイア」の場合。

ラスベガスだと、普通の人なら、有名なジークフリート&ロイなどのイリュージョンショーを思い浮かべますよね? 彼は、同じ路線ではなく、独特のアイデアで、「ローマ帝国の地下での宴」という神秘的なコンセプト案を考えました。そして、同様のIntimate Magicスタイルで、本事業をスタートさせました。

彼の言葉を引用してみましょう:

" Magic Castle was a very personal family project. It was our child.

We never wanted to franchise and have ittle imitation Castles stamped out with cookie cutters.
If there were ever to be another Castle, it would have to be based on the same integrity and love of magic that has been the key to the success of the ollywood Castle.

Imitators have come and gone and the reason for their failure has always been the same. The investors always put the love of the dollar above the love of the art of magic and magicians."

(日本語訳)
「マジック・キャッスルは、私にとって、非常にパーソナルなファミリープロジェクトでした。 つまり、我が子のような存在なのです。

私達は、今まで一度も、事業をフランチャイズ化して、クッキーの抜き型で作ったような「コピー」を作りたいと望んだ事はありませんでした。もし、もう一つのマジック・キャッスルを作るとしたら、それは、全く同じ基準や考え方で、又、マジックへの愛に基づいていなければなりません。それらが、ハリウッドでの成功の鍵だったのです。

多くの模倣者が来ては、去っていきました。そして彼らの失敗の理由は、常に同じでした。 投資家は、常にマジックやマジシャンという芸術よりも、ドル(お金)を優先したからです」。

家族で共有する価値観や伝統は、どんなに経済的に魅力的なオファーも変えることはできないのですね。

その結果、マジック・キャッスルは創立年の1963年から40年以上たちましたが、繁栄を続け、マジックキャッスルの業界での地位は確固なものとなりました。

そしてとうとう、2006年9月に、「ウォーク・オブ・フェイム(Walk of Fame)」により、星が贈られ、ラーセンさんの名前が、ロスアンゼルスのチャイニーズシアター前の道路に刻まれました。

この星は、ショービジネス(映画、テレビ、音楽、ラジオ、演劇という5部門がある)において、重要な貢献をした人に贈られる大変名誉なものです。

安易に売上げを上げる事よりも、自分のオリジナルの世界を長期にわたり維持し、お客様を大事にするためにメンバーシップ制を崩さなかったラーセンさん。彼は、世界中でファンを作り、多くの友人を作り、そして、人々の心に残る素晴らしいワンダーランドを築き上げました。

本当のブランド人、ラーセンさんに乾杯!です。

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