ステキ人ストーリー
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IT業界のグル、アンディ・マルホランド氏、グローバル・ビジネスの秘訣を語る

IT業界のグル、アンディ・マルホランド氏、グローバル・ビジネスの秘訣を語る

今回は、夏休み特集として、イギリスの友人達と共同で取材を行いました。以前メルマガで紹介したボーダフォン社に勤めるグレッグがイギリス在住の「ステキなグローバル人」を紹介してくれました。

今回、取材をしてくれたニック君は、日本が大好きな高校生です。
大学進学も、日本について専攻できる所を探したいそうです。

今回のステキ人は、キャップジェムナイ社の国際CTO (チーフ・テクノロジー・オフィサー)である、アンディ・マルホランドさんです。IT業界の中でも、PCやインターネット関連においてリーダー的な存在であり、グローバル経験が豊富です。

彼のプロフィールは、下記です:
http://www.opengroup.org/contacts/bios/mulholland_bio.htm

今回は、高校生ニック君にあてた父からのラブレターのようですが、その中身は深く、私にとっては、グローバルビジネスに必要なエッセンスが満載の指南書となりました。

 

IT業界のグル、アンディ・マルホランド氏、グローバル・ビジネスの秘訣を語る」

★ ニック君:
グローバルな現場で働くことは、学生の頃から希望していた事でしたか?

● アンディ:
そうじゃないんだ。僕が学校を卒業した1971年当時は、今と違ってて、海外に行っても、まあ何とかやれるだろう、という感じで、派遣されたんだ。そこで関与した仕事は、当然その担当者がフォローしなくてはならなかったから、自然と仕事がグローバルに広がったというわけさ。

★ ニック君:
グローバルビジネスに必要なスキルは、何ですか?

● アンディ:
各国の「違い」を理解し、受け入れる共感力

海外の現場で起きている事が、真実であり、個人が、その異文化に対して、いかに共感できるかという能力(共感力)が、成功の決定的要因だと思う。人々には、この能力があるか、ないかのどちらかだ。この共感力がある人というのは、個人がどの国出身かなんて、考えない。むしろ、「どうしたら、共に問題を解決できるか」「どうしたら、共に物事を創造できるか」と考える。

つまり、何が正しいかという視点はもたないという事。これにまつわる話を一つ挙げよう。僕は、7年前にCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)の仕事をある人から引き継いだ。彼はフランス人で、技術力では僕より上だったと思う。会社の規模が大きくなるにつれて、技術力よりも、31カ国、3700人のスタッフ力をいかに最大化できるか、ということが重要になってきた。

引き継いだ当時は、スタッフ間の協力体制やオペレーションのレベルが十分ではなかった。これが、目指したレベルに達するまでには、3~6ヶ月かかった。僕は常に、会議で何かを決定する時は、「この決定があなたにとって、どんな意味を持つのか?」、「どんな行動をとるのか?」と質問したんだ。何が正しい、悪いというのはなく、単に、各国で、どんな行動がとられるかを理解したかったからだ。

みんなそれぞれの反応を不思議がっていた。なぜなら、各国、反応が違っていたからだ。アメリカ人にとって決定した事は「実行されるべき事」として認識される。しかし、日本人は、「皆で決定された事を尊重しないのは失礼だが、必ずしも各人が納得したわけではない」といった態度が見られた。インド人も同様の反応だった。一方、フランス人の場合、まず上司に確認を取る、といった風で、皆、違っていた。

この会議を通して、海外のスタッフ達は、なぜ今まで、会議から良い結果が出せなかったのかを理解し始めた。

私の経験から、人々の行動や考えには、これ程までの「大きな違い」があり、それは急激に変化しないということを学んだ。重要なのは期待度を、より現実的なレベルに調整し、時間を掛けるということだ。それにより、各人が学び、行動も変わっていく。また、人々を国民性で決め付けたり、「他国の敵」としてではなく、「個人」としての姿を把握する事も重要だ。

市場は世界各国で違う。例えば、韓国では、21歳以下の80%もの人々が仮想空間を訪れていて、驚くばかりの普及率だ。
グーグルは、アメリカ等では圧倒的なシェアをもっているが、韓国、中国では大した存在ではない。また、オーストラリアでは、携帯電話の普及が48%と高いが、同じ大陸面積を持つアメリカでは大して普及していない。なぜ、これほどまで差がでるのか?

答えは、各国に文化的な違いがあるからなんだ。

覚えておくといい。それは、世界の市場は自分が変えるのではないということを心底理解する事だ。各国の市場や文化の差というものがグローバル・ビジネスの醍醐味であり、この「差」を知ることによって、君自身が変えられていく。

★ ニック君:
グローバルビジネスにおいて、あなたが実行しているちょっとした秘訣を教えてください。

● アンディ:
現地の簡単な言葉を覚えたり、習慣に従う事。

僕が外国へ行くときは、必ず、現地のニュースを理解して行く。もし外国の顧客と会議があるのに、現地の基本的なニュースや、何が起きているのか理解していなければ、相手との会話についていけない。

これは、とても大きなメリットをもたらす。なぜなら、もし、同じトピックについて意見交換ができれば、互いが、特別な地から来た異邦人ではなく、同じ事について考え、語り合える一体感ができるからだ。

また、小さな事であるが、日常会話で良く使う簡単な言葉、例えば、「有難う」、「お願いします」等を、現地語で話すなどを心がけている。このような簡単なコメントぐらいは、現地語で話せるようにしておくことが、その国への礼儀だと思う。流暢ではなくても地元の言葉を話すことがこの国を受け入れ、興味を持っていることになるからだ。また、同様に、現地の生活習慣に従う、例えば、現地の営業時間に合わせる、現地の食べ物を食べる、等である。そうすることで、一体感をかもし出し、周りの状況も変わってくる。

また、「ジョーク」も良く使う。ジョークは、皆の波長を合わせるのに最高の方法なんだ。会議でたいてい、一人や二人、5分ほど遅れてくる人がいるので、その間、イギリスやスペイン、ドイツなど、各国のジョークを飛ばしたり、学びあったりするんだ。

★ ニック君:
グローバル人としての必要なメンタリティーは?

● アンディ:
グローバル・ベストプラクティスを目指しながら、ローカルでいかに実行されるかを考えること。

私はよく自分の世界観を人に説明するが、それは、基本的には、以下の3つで構成されている:

【第一】優しい言葉を使ったりして、わかりやすくすること。

理解されている事柄というものは、世界中どこででも、良く伝わり、実行され、維持される。よって、問題となるのは、いかに「適切なタイミング、コスト、品質で、実行できるか?」といった事になる。こちらが買う、又は、売る、相手が社内、社外か、などの立場は関係なく、このことは重要である。

【第二】世界のベストプラクティスは何かを考えること。

最近では、このベストプラクティスは、世界のどこの国からも考えられるだろう。たとえば、通信市場であれば、韓国が挙げられる。韓国では、携帯電話、インターネット、バーチャル世界の使い方が、変わっている。韓国は興味深いビジネスモデルを提供していて、世界との差や、なぜそのように発展したかも理解している。そのビジネスモデルは、他国でも採用される可能性があるのだ。

【第三】そのベストプラクティスを、現地で実行する方法を考える事

現地では、昔から行われているやり方というものがある。つまり、その国の文化、言語、商慣行など交じり合ったものを尊重し、それを考慮した実行方法を考えることが、成功するための最重要点となる。

特に、第二と第三のポイントが重要である。君の提案がどれほど良いものであっても、他の国でどれだけ成果を出していたとしても現地で受け入れらなければ、失敗する。だから、成功する為には、これら3つの普遍の法則を理解し、スタッフにも理解してもらう事が重要なんだ。

★ ニック君:
ビジネスでは、英語は主要な言語なのですか?

● アンディ:
英語は主要な言語であり、必須である。

英語は、ビジネスにおいて、かなり一般的に使われている。私は、世界のどこにいっても、プレゼンテーション等、英語で問題なく行っている。また、英語は、最も普及した「第二外国語」として受け入れられている。例えば、フランス人やドイツ人が一緒のときは彼らは英語で話す。もはや、第一言語とか第二言語とかということではなく、常識の言語なんだ。

先週、面白い出来事があった。韓国のサムソン社で英語のプレゼンテーションを行った時のこと。20%の人は同時通訳を使っていた。そこで、一人のキーパ-ソンが質問してきた。言葉の節々に英語の単語が含まれていたので、英語で話していると思った。でも、よく聞いてみると、実は、韓国語だったんだ。

「インターネット」、「ブラウザー」等、技術業界の単語は英語が多く、これで、いかに英語が現地語の中に浸透しているかという事がわかるだろう。

しかし、個人的には、自分にあわせて、英語を使う努力してくれる人には、細心の注意を払っていて、実際に話してくれる人には感謝の気持ちで一杯なんだ。

英語で話し合いや会議を行う時、英語でしか話せない私は、申し訳ないという思いと、感謝の思いを感じ、そのことを皆に伝える。すると、みんな「大丈夫ですよ」言ってくれる。でも、それが私には問題なんだ。それは、結果的にまるで私が現地の言葉や社会に、文化的価値を置いていないようなものになってしまうから。でも、それは本意ではないんだ。

★ ニック君:
グローバルな会社がやらなければならない事とは?

● アンディ:
文化的に互いを受け入れるリラックスした職場環境を整えること、又、スタッフに、グローバル・ビジネスのメリットを理解してもらうこと。

ハイテク業界では、一人の人間が全てを知っているということはなく、それぞれの人や会社が協力しないと成り立たない。

あなたの視点を人々に共有させることが求められると同時に、人々には、それぞれ違った役割であっても、同じ仕事環境の中で働いているのだと確信できるよう励まさねばならない。

私の会社は、テクノロジーの面で他社を抜き、高い評価を受けている。それは、我々が、リラックスした職場文化を保っており、スタッフの相互理解が早いからだ。人々があなたの事を知り、信頼し、あなたに何でも話すことができれば、問題があると、早い段階で打ち明けてくれる。

働いている人々は、その人の能力が買われて働いているので、プロとしての意識があり、よっぽど強調して言わないと、問題を共有してくれない。これは、グローバルなビジネスであろうとなかろうと、今日のどんなビジネスにも大切なことだ。

一つ例を挙げよう。私の会社では、海外からのメールの多くは、5-6単語という短いものが多いんだ。まるで、同じオフィス内の向かい側から来たような親近感を感じる。人々を知り、信用する事により、このような良い雰囲気ができる。

グローバルな組織がやるべき事は、自分が所属している組織がグローバルであり、それは素晴らしい所であると信じさせること。なぜなら、このような組織では問題に対する視点や解決方法は多様であり、このような組織で働いていると、多くの視点が得られるから。その意味で私は、多くの視点や知識の「大きなプール」を所有しているようなものだよ。

★ ニック君:
最後に、日本と西洋のビジネスの違いを教えて下さい。

● アンディ:
意思決定の方法が大きく違う。

日本と西洋の組織の差というものは莫大だ。恐らく、君が今後遭遇する壁の中で最も大きいものとなるだろう。

僕たちも、日本に支社を持っていたが、文化的ギャップがあまりにも大きいので、日本の最大手通信会社に売却したんだ。

僕は、このギャップを尊重しないで成功した人を知らない。シスコは日本で大成功したけど、それは文化的ギャップを尊重したからだ。日本市場の場合、彼らのやり方を尊重し、互いに、経験と知識があるといった前提に立った平等な関係を構築できれば、だいたいうまくいく。

ぜひ覚えておいたほうがいいのは、日本人に早期の意思決定を強要しない事。意思決定というのは、西洋では当たり前のように個人レベルで行われるので、苦にならない。しかし、日本ではそうではない。日本では意思決定というのは、個人が行うものではなく、人々の総意をもとに行われる。

また、彼らに自分のペースを強要してはいけない。彼らには彼らのペースがあるから。初めて会った人に、いきなり、ビジネスの話に入るのは失礼であり、まずは天気や時事について時間を費やすのが通例だ。彼らは、あなたがどれくらい現地のルールや情報に通じているかを理解する事により、どれくらい信用できるかを図っている。

高校生のニック君に語ったグローバル人としての成功の秘訣、いかがでしたか?
アンディの豊富なグローバル経験から得た教訓は、私達日本人にとって学ぶ点が多く、示唆に富んでいたと思います。

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