ステキ人ストーリー
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映画”恋人たちの予感”に見る、脚本家ノーラ・エフロンのブランディング

映画”恋人たちの予感”に見る、脚本家ノーラ・エフロンのブランディング

最近のミャンマーでのデモに心を痛めています。
皆さん、ミャンマーは、東南アジアの中でも最貧国だと知っていましたか?
一人当たりの国民総生産がわずか219ドル(約2万5185円)で、一握りの富裕層と軍事政権が富を独占する国なのです。
そして、その影に、中国とアメリカの思惑があるのを知り、さらに国際政治の複雑さを感じました。
アウン・サン・スーチンさん率いるミャンマーの国民が、一国も早く、基本的人権が保たれる国に住むことができますよう祈ります。

 

皆さんの中にも、大好きで何度も見る映画があると思います。
私の場合は、「恋人たちの予感 (原題:When Harry met Sally...)」です。日本でも見ていたのですが、なぜかアメリカ留学生活時代にハマッてしまい、寮で週に何度も見ていました。イタリア人のルームメートも結構な映画フリークでしたが、「1本の映画に取り付かれている私」を見て、信じられない様子でした(笑)。

この映画のストーリーの詳細は、
http://www.nobby.de/e_mwhms.htm

今回のメルマガでは、この映画の脚本家であるノーラ・エフロン氏を取り上げます。映画の「セリフ」を通じで、彼女のステキ・ポイントに迫ります。
ストーリーは、メグ・ライアン扮するサリーと、ビリー・クリスタル扮するハリーという男女の恋物語です。最初の出会いでは共に最悪の印象を持ちますが、11年以上もかけて友人関係を築きます。互いの恋愛相談をしたり、友人へのギフトのショッピングに行ったり、恋人ができるまでのクリスマス・イブのダンス相手をしたり。

この間、二人は、共に成長し、相手を理解していきます。それが、ある夜、サリーの失恋を慰めていた時に、一夜を共にしてしまい、ギクシャクした関係になってしまいます。

友人関係を貫こうと元の友人のように振舞うハリー、それを見て、恋愛相手として拒否された思いで、ハリーを避けるようになったサリー。

クリスマスのイブの夜、マンハッタンを一人寂しく歩いていたハリーは、失って初めて、サリーが運命の相手だと気づく、そんなハッピーエンドのストーリーです。

この映画は、1989年にロブ・ライナー監督によってリリースされました。ノーラは、ロブの経験と自分の経験をミックスして、脚本を書きました。この映画は大成功し、メグも、ビリーも、ロブもノーラも名声を手にしました。

フランク・シナトラの「It had to be you」等、数々のオールド・スタンダードとジャズをハリー・コック.Jrの軽快な声でカバーされており、ストーリをより魅力的にしています。

なぜ、こんなにも惹かれたんだろう。映画を見た後も今も、じっくり考えてみないと、その良さを言葉で説明できません。「本当に良いものって、簡単には言葉にできないのではないか?」とさえ思います。敢えていうなら、この映画を見ると、ふんわりした気分になったり、「ある、ある!」といった共感や笑いをも感じられる、ワクワクした気分になれる映画なのです。

ノーラのバックグランドですが、彼女は、1941年、ブルックリン、NY生まれで、両親共に脚本家という家庭で育ちました。ジャーナリストを目指してキャリアを積み、「ニューヨーク・ポスト」、「ニューヨーク・タイムズ」、「エスクワイヤ」誌などで、実力を発揮しました。

悲しいことに、両親はアルコール中毒で、自身も3回目の結婚を経験しています。スローな口調で、タフな性格を持ち合わせている2男の母です。1992年からは監督としての活動も開始しました。

彼女の代表作は、
-「奥様は魔女」(2005年)
-「ユー・ガット・メール」(1998年)
-「マイケル」(1996年)
-「めぐり逢えたら」(1993年)

そして、
-「恋人たちの予感」(1989年) 

*メグ・ライアンを3回、トム・ハンクスを2回起用しています。

これらの作品に共通している点から見える彼女のポジショニングを考えてみました。それは;

「親近感とユーモアの中に、夢を与えてくれるアップテンポのストーリーが得意な、脚本家兼監督」、

ではないかと思います。

それでは、実際のセリフを通じて、彼女のステキポイントをひとつづつ分析してみたいと思います;

ノーラエフロンのステキ・ポイント:

●ステキポイント1:等身大の自分の価値観や経験を題材に使う

これは、サリーとハリーが、レストランでデザートを注文するところです。男性のハリーの注文がそっけない程、簡単なのに対して、女性のサリーは、メニューにないようなものを複雑に注文する笑えるシーンです。


Hally:
I'll have a number three.

Sally:
I'd like the chef's salad, please, with the oil and vinegar on the side...and the apple pie a la mode. 

Waitress:
Shef and apple a la mode...

Sally:
But I'd like the pie heated and I don't want the ice cream on top, I want it on the side, and I'd like strawberry instead of vanilla if you have it, if not then no ice cream just whipped cream but only if it's real; if it's out of the can then nothing.

Waitress:
Not even the pie?

Sally:
No, I want the pie, but then not heated.

( 日本語訳 )
ウェイトレス:何にしますか?

ハリー:(メニュー見て)3番の定食にするよ。

サリー:私はドレッシング添えのサラダと、パイ・ア・ラ・モード。

ウェイトレス:はい、わかりました。

サリー:でも、パイは温めてね。それから、アイスクリームは上にかけないで横に添えてね。バニラよりもイチゴがいいわ。もしないなら、アイスクリームじゃなくて、本物の生クリームにして。でも缶詰めのものだったら、要らないわ。

ウェイトレス:え、パイも要らないのですか?

サリー:パイは頂くわよ、それだったら、冷たいままでいいわ。

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信じられませんが、これは、ノーラの実際の注文方法です。監督ロブいわく、一度だってメニュー通りに注文したことがないらしい!
この会話を良く聞くと、結局パイを温めたほうがいいのか、そうじゃないのか、わからなくなります。メニュー通りに注文できない女性を見て、かなり笑えったシーンでした。

舞台設定についても、彼女の経験を題材に使っています。彼女はNY出身で、今でもマンハッタンに住んでいます。映画では、セントラルパーク、メトロポリタン美術館、ラガーディア空港など、ポピュラーな場所がいくつも登場しました。

又、ハリーは神経質な男性で離婚を繰り返している、サリーはなかなか結婚に踏み切れない、という人物設定がされています。

これは、NYに住んでいる人の多くが、生活は豊かでも、心に悩みや寂しさを抱えている事の描写です。ニューヨーカーの視点で微妙な心理を面白おかしく描写できたのは、彼女が実際にNYに住み、愛しているからだと思います。

サリーの楽天的な性格や、彼女が大学卒業時に、ジャーナリストの夢を抱いてNYを目指す姿も登場しますが、これは、まさにノーラの青春時代に実際に起きたことを題材にしています。

自分の仕事に、自分の価値観や経験をそのまま投影する、、、パーソナル・ブランドを持った仕事とは、まさにこの事だと思います。

●ステキポイント2:男と女の本音や、人生の教訓について学べる

次は、サリーが、恋人のジョーと別れた事をハリーにレストランで語るシーンです。初めは淡々と伝えるのですが、やがて悲しみが彼女を覆い、寂しい本音が見え隠れします。

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Sally:
And Joe and I used to talk about about it, and we'd say we were so lucky we have this wonderful relationship, we can have sex on the kitchen floor and not worry about the kids walking in. We can fly off to Rome on a moment's notice.

And then one day, I was taking Alice's little girl for the afternoon because I'd promised to take her to the circus, and we were in the cab playing "I spy"- I spy a mailbox, I spy a lamp-post- and she looked out the window and she saw this man and this woman with these little kids. And the man had one of the little kids on his shoulders, and she said "I spy a family".

And I started to cry. You know, I just started crying again. And I went home, and I said, "The thing is, Joe, we never fly off to Rome on a moment's notice".

Harry:
And the kitchine floor?

Sally:
(悲しそうに)Not once. It's this very cold, hard Mexican ceramic tile.

( 日本語訳 )
サリー:
ジョーと私は、結婚しない自由な関係について、本当に自分たちはラッキーだと良く話したわ。台所で抱き合っても、子供が入ってくるのを心配しなくていい。ローマにだって、行きたければいつでも行ける、なんてね。

ある午後、友人のアリスの子供を サーカスに連れて行ってあげた。途中のタクシーの中で、「○○が見えた」ごっこをしていたの。「郵便受け、見つけた!ランプを見つけた!」って感じでね。丁度、窓の外に親子連れがいて、父親が小さな子供を肩車にしていたの。彼女は、「家族を見つけた!」と言った、そして私は涙が止まらなかった。

自宅に帰って、「ジョー、ローマなんて、私達、結局行っていないわよね」と。

ハリー:
台所で抱き合うっていうのは?

サリー:
(悲しそうに)一度だってなかったわ。冷たくて固い、単なるタイル張りの床があるだけよ。

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サリーは、結婚しないで、恋人というステータスを楽しんでいるようで、実はそうではなかった。独身で子供がいない自分を振り返り、本当は寂しかったと告白しています。ノーラのメッセージとして、自由やリッチな生活より、家族を持つ喜びが伝わってきます。

これは、ノーラが 2度の離婚という、つらい経験をしたからこそ、しっかりとしたメッセージになったのだと思います。

●ステキポイント3:コメディー要素と、リズム感の良い対話

いよいよクライマックスへ入るワンシーンを紹介しましょう。

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サリーは、元彼が結婚する事を知り悲しむ。そんなサリーをハリーが慰めているシーン。

Harry: If you could take him back now, would you?

Sally: No! But why didn't he want to marry me? What's the matter with me?

Harry: Nothing.

Sally: I'm difficult.

Harry: You're challenging.

Sally: I'm too structured, I'm completely closed off.

Harry: But in a good way.

Sally: No, no, no, I drove him away. And, I'm gonna be forty!

Harry: When?

Sally: Someday.

Harry: In eight years.

( 日本語訳 ):
ハリー:もし彼とよりを戻せるなら、そうするかい?

サリー:イヤよ!でも、何で私と結婚しようとしなかったの?私のどこがいけないの!?

ハリー:何も悪くないさ。

サリー:理屈っぽい?

ハリー:スリリングだね。

サリー:自分の考えを曲げない女なんだわ!

ハリー:長所じゃないか。

サリー:ウソ!彼は私から逃げていったのよ。40歳になっちゃう!(泣く)」

ハリー:いつ?

サリー:いつか,,,」

ハリー:あと8年も先だよ。

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まだ32歳なのに、このまま独身状態が40歳まで続いてしまう、、、女性なら誰でもわかるこんな焦りを、漫才のような「ボケと突っ込み」で展開しています。ノーラは、軽快なリズムで、男女の会話を短くやり取りすることが多い。また、短い文章で内容にユーモアのセンスをちりばめています。こうすることによって、観客を飽きさせず、かつ、心の中を深く伝えることが可能になっています。

●ステキポイント4:親近感の中に、ロマンチックを感じさせる

そして、いよいよクライマックスです;

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クリスマス・イブに、一人で寂しく過ごすハリー。一方、パーティーに出席しても虚しいサリー。一人マンハッタンを歩き、失って初めて、サリーが運命の人だと気づくハリーは、年末で込み合う通りを走りぬき、彼女に会いに行く。そして、息を切ったように愛の告白をする。

Harry: I've been doing a lot of thinking, and the thing is, I love you.

Sally: What?

Harry: I love you.

(むっとしながらサリーは答える)
Sally: How do you expect me to respond to this?

Harry: How about, you love me, too.

Sally: How about, I'm leaving.

その場を去ろうとするサリーに、ハリーが告白を続ける;

Harry: I love that you get cold when it's 71 degrees out. I love that it takes you an hour and a half to order a sandwich.
I love thatyou get a little crinkle above your nose when you're looking at me like I'm nuts. I love that after I spend the day with you, I can still smell your perfume on my clothes.

And I love that you are the last person I want to talk to before I go to sleep at night. And it's not because I'm lonely, and it's not because it's New Year's Eve. I came here tonight because when you realize you want to spend the rest of your life with somebody, you want the rest of your life to start as soon as possible.

Sally: You see? That is just like you, Harry. You say things like that, and you make it impossible to hate you. And I hate you,

Harry. I hate you.

そして二人は抱き合います。

( 日本語訳 ):
ハリー:やっと気づいたんだ。君を愛している。

サリー:何て言った?

ハリー:君を愛している

サリー:どう答えて欲しいの?

ハリー:君も僕を愛しているというのは、どうかい?

サリー:私の答えは、「先に帰るわ」よ。

その場を去ろうとするサリーに、ハリーが告白を続ける;

ハリー: 22度の暖かさで風邪を引く君。サンドイッチの注文に1時間半かかる君、僕を見るときに、しかめっ面する君。一日共に過ごした後に、僕の服に染み付く君の香水の香り。どれも大好きなんだ。

一日の終わりにおしゃべりをしたいのが君だ。決して、一人で寂しいからとか、ニュー・イヤー・イブが理由じゃない。残る人生を誰かと過ごしたいと思ったら、早く始めるほうがいいだろう?

サリー:ほらね、それがあなたなのよ、ハリー。いつだってそうよ。こうやって、あなたが嫌いになれないじゃないの!嫌いよ、大嫌い!

そして二人は抱き合います。

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誰だって、ロマンチックな恋や思い出があると思います。ノーラの作品では、観客自身にとって身近な題材を使い、絶対ありそうもない事を、あるかもしれないと思わせながら、ロマンチックに描きます。だって、ハリーのような言葉で、プロポーズされたい、女性はそんな願いを持っていますが、実際にはなかなか起きません。でも、彼女の作品では、この願いを自然な形でかなえてくれるのです。

いかがでしたか?

彼女は、脚本家・監督として、人間の心理をアップテンポのコメディを織り交ぜながらロマンチックに描くという強みを持っています。このポジショニングで、すでに世界で第一人者となっています。

この専門性に加えて、自分の人生への教訓や価値観をうまくミックスさせ、ノーラさしさを表しています。

私たちも、自分の仕事を通じて、自分の価値観や人生訓を表した形でサービスや商品企画ができたら、どんなに素晴らしいかと思います。そして、自分ブランドへの道を一歩切り開けるのではないかと思います。ぜひ試してみてください。

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